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お父さんの忘れ物
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著者:なりたもえこ
プロフィール
1957年6月16日香川県高松市で生まれる。
浪速短期大学(現大阪芸術大学短期大学部)広報マスコミ科卒業
上京して漫画家のアシスタント経験
後に中堅ゲーム制作会社にてキャラクターデザイン担当
退社後漫画家としてデビュー。
子育て、ファミリー漫画をメインとして執筆。
代表作「ステキなわがママ」(芳文社刊)
現在は趣味の劇団活動をし自作の脚本で年1回の公演を開いている。
書籍の内容
本書は、いわぬま市民劇団ウィープの第5回公演として2005年10月9,10日に岩沼市民会館中ホールで発表された『お父さんの忘れ物』の脚本です。
作者のなりたもえこさんは脚本家としても活躍されていますが、本公演では姫芝・姫子役として俳優としても出演されています。
主人公の茂が直面する妻の死という現実。
後にはふたりの子供が残される…。
呆然とする茂。
いったい自分はどうすればいいのか…。
妻の遺品の中にあった『FATHER』というテレビゲーム。
失われたものを取り戻すため、茂はゲームの世界の中に入っていく…。
(A4サイズ 本文70頁 2006年2月26日発行)
ISBN 4-903465-24-1
【本文一部紹介】
(P67)
葬儀屋 木下さん、四葉のクローバーの花言葉ご存知ですか?
一枚目は「勇気」
ヨシ 二枚目は「力」
なずな 三枚目は「希望」
茂 四枚目は「愛」だ。その愛を今探してる。
葬儀屋 そして4枚そろって「幸福」というわけですよ。すみません、もう時間が押し迫ってます。そろそろ支度を。
なずな いや!私は探すの、見つかるまで。
茂 ご迷惑をおかけしました。では、よろしくお願いします。
なずな お父さん!
茂 ないものはないんだ!いつもこんな思いをしてお母さんは四葉をさがしてたんだ。その気持がわかっただけでもいいじゃないか。
ヨシ 家族の幸せを願って、お母さんはさがしてくれてたんだね。
葬儀屋 四葉はなかったけど、庭のクローバーを棺に納めましょう。知ってますか?クローバー・・・白詰草は昔、梱包材がまだなかった時代ガラス製品の輸入の時に詰め物として使われていたそうです。
お母さんの気持やお父さん、ヨシ君、なずなちゃん、家族4人の気持が大切に運ばれるように、納めませんか。
茂 そうだね。みどりの気持を壊さないように大切に大切に送ってやろう。
みんな棺にクローバーを詰める。
茂 みどり、今まで俺を助けてくれてありがとう。子供たちのことは心配するな。なんだ、その顔は疑ってるのか?おれの性格1番知ってるのはお前だろ。おれはウソのつけないやつなんだよ。安心して霊山に旅たて!そして待ってろ、俺が行くまで。なに?もう待つのはいやだってか?そうだろ、でも、飽きるまで待たせてやるよ。その代わり思い出話をどっさりお土産に持っていくから。
なずな あ、お母さん笑ってない?
ヨシ ほんとだ、ほんのり頬がピンク色になってる。
葬儀屋 これはめずらしい、成仏された時の相ですよ。安心して旅たたれたんでしょう。
棺のふたを閉める
葬儀屋 そうだ、四葉のクローバーのもう一つの花言葉ご存知ですか?
茂 もう一つ?幸福だけじゃないのか
葬儀屋 「私はいつもあなたの側にいます」
茂 そうだな・・・そうだったよな・・・お前はいつも俺の側にいてくれた、・・・みどり・・・
暗転
十五場
茂、みどりの遺影抱えて出てくる。つづいてヨシ、なずな出る
茂 四葉のクローバーは見つからなかったけど、お父さんはもっといいみのを見つけたよ。
ヨシ なに?
茂 教えない
なずな お父さんのケチ
茂 お母さんがこっそりお父さんに教えてくれたんだ。
なずな もう!お母さんたらずるい
茂 お前たちが結婚してお父さんやお母さんになったら教えてあげる。
それまでお父さんはお前たちのお父さんとして戦うからな。しっかりお父さんの背中見てろよ!
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