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西田一彦さんインタビュー(2)


西田さんは、富山県で活躍されている漫画家・作家です。今回出版された『本に関するひとりごと』では、読書の世界を糸口に業界、新聞、雑誌などから興味深い発見を汲み上げていく内容になっています。今回は、西田さんに漫画、映画、特撮番組などのお話を、インタビューさせていただきました。




― 本書では古本についても語っておられますね。古書の醍醐味について語っていただけますでしょうか?

う~ん、そうですね、やっぱり希少価値のある本を自分が所有しているというのが快感なのかもしれません。
わたしは歴史的価値のある高価な初版本とか、そういう古書には興味がないのですが、 ミステリマニアの間で垂涎ものの本はやっぱり関心がありました。
角川書店から以前出ていて絶版になった、リチャード・二ーリーの『殺人症候群』と『心ひき裂かれて』の単行本を金沢市の古本屋で見つけて、ずっと所有していたんですが、マニアの間で復刊を切望する声が高まるほど、嬉しかったですね。
「けけけけけけ、俺は持っているぞ、俺は読んだぞ」、ってね。(笑)
だから 6年前に文庫で再版されたときは「くそ~」という気持ちでした。
それがじつは、今でも古本屋で、へレン・マクロイの絶版本、『暗い鏡の中に』(ハヤカワ・ミステリ文庫)を探しています。
絶妙なタイミングで買いそびれ、それ以来、ず~と探しています。
今後も、復刊の予定はないみたいですし・・・。
おっとこんなことを書いたら、持っている人間が読んだら、「けけけけけけ」と笑いますね。(笑)
あ、それから高校時代にSFも少々読んでいて、サンリオSF文庫の、けっこう奇妙なラインアップが好きでいろいろと買っていたんです。
でもしょせんミステリほど関心がなかったので、大学時代に友人に一まとめ1000円で全部売りました。
それがこの文庫自体がなくなってしまったらしく…数年前に東京の古本屋に行くと、 とんでもない高い値段がついているではありませんか!
人気のフィリップ・K・ディックの短編集もたしか持っていたはずなんです。
もう手遅れですが、もったいないことをしたものです・・・。


― サンリオSF文庫はたしかにマニアックなラインナップでしたね。ディックの紹介も先駆的でした。前回は西田さんの愛読書に関してお伺いしましたが、今回は西田さんのお好きな漫画の作品などについてお話していただけますでしょうか?

漫画も小さいころからよく読みました。
だから好きな作品は10でも20でも、いや、100でも200でも挙げられます。
そうですね、中でもとにかく興奮して読んだという点で選べば、文句なしに望月三起也の『ワイルド7』です。



中学一年生のときにハマりまして、とにかく続きを読みたくて当時マイナーだった掲載誌「少年キング」を毎週買っていましたから。
毎回、テロリスト対草波隊長率いるワイルド7、という単純な図式なんですが、憎たらしいヒールと7人の個性あふれるヒーロー達に心がおどりました。
おそらくキャラクターに感情移入したのはこの漫画が初めてだったかもしれません。
それとバイクや拳銃などの緻密なメカニックな描き込みにも目を奪われました。
あと、健康的なエロチシズムあふれる女性描写にもゾクゾクしましたね。
思春期には、立派な太ももくらいでも十分刺激的だったようです。(笑)

大学のときは一応「はしか」のように、つげ義春を読みあさりました。
初期の劇画本や中期の文学的な作品、その後のシュールなものも全部読みました。
精神的に不安定な部分がもろ作品に反映されていたため、もう十年ほど前になりますが連作集『無能の人』が出版されて、読んだときには、家族の絆みたいなものが描かれていて、その安定した精神状態にホッとしたのを覚えています。(笑)
作品で一番のお気に入りは「長八の宿」です。
もう何百回読み返したかわかりません。名作です。
舞台となった旅館は今も伊豆にあります。


― 本書ではホラー小説にも触れられていますが、ホラー小説入門にお勧めの1冊はありますでしょうか?

ホラーは大好きですね。
ただホラーというと、一般的にサイコなスプラッターなものとか、キング以降のモダンホラーを思い浮かべるでしょうが、わたし個人的には、幻想的な怪奇小説がお気に入りです。
日本のものではなんといっても江戸川乱歩でしょう。
もう脳みそバーン!なのは『孤島の鬼』。



読んでいて頭の整理をする暇もなく繰り広げられる悪夢の連続です。
乱歩では『パノラマ島奇談』や、わが富山県の魚津が舞台の短編『押絵と旅する男』などもお勧めです。
ほかでは日本の幻想小説の金字塔、夢野久作『ドグラ・マグラ』も外せません。
正気と狂気がとめどなく反転を繰り返すその異常な世界は、
主人公だけでなく、読者のアイデンティティをも宙吊りにさせます。
あと、文豪、夏目漱石の『夢十夜』も傑作です。
中でも「第三夜」の恐ろしさといったらありません。
中学生のときに読んで背筋を凍らせたのですが、今読み返しても十分怖いです。
名文というのはとにかく恐怖をより効果的にさせる最大の演出のようです。
海外のもので最初にドキドキしながら読んだのは『怪奇小説傑作選 1』(創元推理文庫)
に収録されている、W・W・ジェイコブズの「猿の手」です。
家族愛がとんでもない恐怖へと発展していくたいへん有名な作品なのですが、
これをきっかけに戦前の外国の怪奇小説はけっこう読みました。

あとホラー映画と原作の読み比べについても、少し言わせていただきます。
日本でも過激な演出で話題になり大ヒットしたウィリアム・フリードキン監督のオカルト映画『エクソシスト』(71)ですが、原作、W・P・ブラッディ『エクソシスト』(新潮文庫)を読むと、少女の悪魔憑き事件を通して「悪魔ははたして実在するのか? またそれに対抗する神の実在は?」というテーマに真正面から取り組んだ作品であることがわかり、ラストはたいへん感動的です。 
スタンリー・キューブリック監督の映画『シャイニング』(80)は原作者のスティーブン・キングにボロクソにけなされましたが、個人的には名画だと思います。
もちろん映画に登場する館の幽霊たちは、原作、『シャイニング』(文春文庫)ほど素晴らしくなく陳腐ではありましたが、「惨劇を起こすのは幽霊ではなく人間である」という恐怖では、キューブリック演出による原作にはない深層イメージの映像美と、ジャックニコルソン演じる、心優しい父親が殺人者へと変貌する狂気は、完全に原作を上回っています。



つまりキングは恐怖を幽霊に求め、キューブリックは人間に置いたのです。
そういう考えの違いからしても、この原作と映画は別物であり、それでいて両者は傑作になっており、ホラーファンにとっては原作と映画で二度美味しい思いができるのです。
原作の映画化という形ではある意味、二人の天才による理想的な姿だと思います。

最後にジョン・カーペンター監督『宇宙からの物体X』(82)について一言。
映画は衝撃的な特殊メイクでグロテスクな異形の美というものを恐怖と共に実感できる傑作です。
原作はJ・W・キャンベル・ジュニア『影が行く』(創元SF文庫)。
文庫で100ページほどの中短編ですが、氷に閉ざされた南極基地を襲う謎の影の正体を スピーディーな文体で追求しながら、「隣にいるのは本当に人間なのか?」
という疑心暗鬼から生まれる恐怖を見事に描いています。
あと子どものときの映像恐怖体験、テレビ番組『ウルトラQ』と映画『マタンゴ』についても思いがあるのですが、また次回の著者インタビューで。(笑)


― 著者インタビューと言わず、今度は映画や特撮番組に関する本も書いてください(笑)。さて、話題を変えまして、以前ミステリーの新人賞に応募されたことがあると聞きましたが?

はい、もう十年以上前ですが、文芸春秋社の『オール読物推理小説新人賞』に応募しました。
400字原稿用紙に手書きで100枚。生まれてはじめて推理小説を書きました。
小学生のときからミステリーを読んでいましたが、頭から書けるはずなどないと思っていたのですが、30歳を過ぎて「もしかしたら、書けるかもしれない」と小説の神様が降臨してきたのです。
その時の応募作品総数は556編。中間発表を見たら第二次選考通過の50作品の中になんと自分の名前と作品名が載っているではありませんか!
応募するときは「ぜったいにダメだ」と思っていたのに、
そうなると「受賞したら賞金の50万円で何を買おうか?」と急変しました。
結果は最終選考の6作品に残らなかったのですが、そのときは「おれは絶対に7番目で落ちたに違いない」と思いましたね。(笑)
短編では難しい劇中劇というスタイルをとっていたし、おそらくストーリーも破綻していたはずなんですが、とにかく食い下がって書きました。
犯人の細かい動作や気持ちもきっちり書き込み、タイトルも最後の一行ではじめて意味がわかるという凝りようでした。
「そのミステリーが好きだ」という熱い気持ちが、下読み委員の心を間違った方向に動かせたのかもしれません。
そんなこともわからず次回作でなんとか賞を手にしたいと思いましたが、務めていたデパートでその後すぐに地元の高岡に転勤になり、地元の水が合い、毎晩飲んだくれ、結局投稿から遠のきました。

デパートを退社しまた創作の気持ちがわいたのですが、すぐに執筆せずに、少しミステリーを書くということにについて勉強しようと思い、サントリーミステリー大賞の読者選考委員に応募しました。
そのときのことはいずれ詳細を書きたいと思っていますが、とにかく選考会にのぞみ、「こりゃおれにはミステリーなど書けないな」と思ったのです。
それくらい、創作の厳しさを知りました。
とはいうものの、いつかはまた賞にチャレンジしたいとは思っていますが、ジャンル的にはミステリーかどうかはわかりません。
「自分の書きたいもの」と「自分に向いているもの」を現在試行錯誤しながら考察している最中です。
もしかしたらミステリー4コマ漫画を応募するかもしれません。(笑)


― 今後が楽しみですね。では、将来的にはどの分野で一番自己表現をしたいと思われますか?

「自分に向いている」かどうかはわかりませんが、やはり小説です。
本ばなれ、活字ばなれが進んで、小説は売れないと言われていますが、ものすごく面白い小説なら必ず読者は飛びつくはずだと思っています。
今は、思い切り笑えて、少しホロっとするユーモア小説を構想中です。
結局、ミステリーでもホラーでもなく、お笑いです。(笑)
人を文章で笑わせえるということが、現在の最大の関心事です。


― どうもありがとうございました。


西田一彦プロフィール
1961年生まれ 富山県高岡市在住
近畿大学商経学部商学科 卒業
2000年北日本新聞社主催『初春漫画コンクール』優秀賞受賞
審査員で富山県井波町在住の漫画家森みちこ氏の薦めで漫画似顔絵などをイベントで描きはじめる。
「西田漫画工房」を立ち上げ、現在、北陸3県のタウン誌、雑誌、新聞などを中心に活動。
読書家でもあり「サントリーミステリー大賞」の読者賞選考委員を3期務める。
メルマガ『知的武装のためのパワー読書術』をまぐまぐより配信中。

【ホームページ】 http://nishida.ing3.com/