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吉本正信さん 本山陽一さん インタビュー


今回は内観関係の方お二人へインタビューさせていただきました。

吉本正信先生は現在、内観センターの代表で、内観の創始者である故吉本伊信先生のご子息です。

本山陽一先生は現在、白金台内観研修所の所長で、故吉本伊信先生とは2年間寝食を共にされた直系の弟子にあたる方です。

内観とはそもそもどういったものなのか、といったことからはじまって、内観に取り組むことによってどのようなことが期待でき、どのような実績があがっているかといったことや、故吉本伊信先生のエピソードなど、お伺いしました。

※インタビュー本文中敬称略
吉本・・吉本正信先生発言
本山・・本山陽一先生発言



吉本伊信講演 阪大



― 現在知られている「内観」はどなたがつくったものでしょうか?

本山 : 吉本伊信(よしもと いしん)という方です。



氏は、1916年(大正5年) 奈良県大和郡山市に生まれ、幼い時より仏教的な雰囲気の中で育ち、お経を学びました。22才のとき浄土真宗の一派に伝わる「身調べ」という行で心の一大転換を得る大きな喜びの体験をしました。その喜びを世界中の人に体験して欲しいという願いから、氏は「身調べ」を改良して現在の内観法を開発しました。現在の内観法は、宗教色を取り除き、誰にでもできるような合理的な方法になっています。氏は、1988年(昭和63年)に亡くなるまで内観普及に人生を捧げられましたが、実業家、浄土真宗木辺派の僧侶、刑務所の教誨師、篤志面接委員としても活躍しました。


― 内観について学術的研究もなされているとのことですが、存在する学会やその活動内容について、お教えいただけるでしょうか。

本山 : 日本国内での主な学術団体としては、日本内観学会日本内観医学会の二つがあります。

日本内観学会は、1978年(昭和53年)に設立された学際的な学会でさまざまな分野の方が会員になっています。主な活動としては、年に一度「日本内観学会大会」と「内観療法ワークショップ」が開催されています。その他、毎年『内観研究』という学術誌が発行されています。

日本内観医学会は、1998年(平成10年)に設立され、内観を治療法として医学的に研究する団体で会員は医師を中心に臨床心理士、看護師に限られています。こちらも年に一度「日本内観医学会大会」が開催され、『内観医学』という学術誌が発行されています。


― 内観を実施する場合の目的ですが、事実上は人それぞれな面もあるとは思うのですが、本来想定される目的はどういったことになるでしょうか?

本山 : 内観を実施する目的は多岐に渡っていますが、大きく分けると自己啓発と悩みの解決の二つになります。

自己啓発には、経営者の能力向上、社員研修、先生の生徒指導研修、医師、看護師の研修、心理学方面の学術研修、少年院、刑務所の職員研修、スポーツ選手のメンタルトレーニング、宗教・ヨガ・東洋治療等の指導者研修などのさまざまな分野の方が訪れます。

悩みの解決法としては、親子、夫婦、子育て等の家族問題・職場での人間関係、精神的な病気の回復などです。


― 標準的な内観のやり方を簡単にご説明いただけますか。

吉本 : 内観には1週間の「集中内観」と、毎日続ける「日常内観」があります。
内観の仕方を体得するために「集中内観」があります。面接者の指導があっても軌道にのるまで苦労するのに、一人で自己流で始めても内観にならないで苦労するだけです。最初に集中内観で基本をきちんと身につけて下さい。
集中内観で内観の仕方を身につけた方は、日常生活の中で一人で内観を続けることができます。これが「日常内観」です。集中内観は卒業ではなく、日常内観への入学と考えて下さい。

1.集中内観
部屋の隅の屏風の中に、楽な姿勢で座ります。
母(又は母親代わりの人)に対する自分を、
①お世話になったこと、
②して返したこと、
③ご迷惑かけたこと、
の三項目について具体的な事実を調べます。

調べるのは年代順に、小学校低学年、高学年、中学校というように年令を区切って、現在まで調べます。
母がすめば、父、配偶者など身近な人に対する自分を同様にして調べます。
約二時間毎に面接があり、調べたことを簡単に報告します。面接者は調べ方が違っている場合には注意しますが、お説教やカウンセリングはありません。
平均的には一週間、朝5時から夜9時まで内観に集中します。トイレとお風呂以外は席を立ちません。食事も自分の席でとります。

集中して内観した結果、自分の立場で自分の側からしかものを見なかった人が、相手の立場でものが見えるようになり、さらに第三者の立場で事実を事実として客観的に見ることができるようになります。
その結果、様々な気付きが得られます。
以上のような話を、聞いたり読んだりして判ったような気になっても、一晩寝ると忘れてしまいます。一週間かかって自分で気がつくことが大切です。
又、せっかく一週間かかって気がついても、日常生活に戻ると、何日かで忘れてしまうのです。そこで、日常内観が必要になるのです。

2.日常内観
毎日1~2時間の内観を続けていただきます。
半分は集中内観と同じように過去の自分を調べます。
残りの半分で、昨日(又は今日)一日の自分を調べます。
通勤・通学途中や就寝前の時間等を利用して日常内観ができるように練習するのが集中内観です。集中内観は、日常内観の練習なのです。


― 内観は宗教とは違うものでしょうか?

吉本 : 「内観」と「内観法」という言葉の使い分けについて、私は次のように考えています。

「内観」とは方法・型式のことを言います。そして、何のために内観するかという目的によって呼び名が違うのです。例えば、矯正教育等が目的の場合は「内観教育」、心身症の治療等が目的の場合は「内観療法」、求道等が目的の場合は「内観法」と呼びます。

このように「内観」という方法を宗教の修行の一つとして取り組む場合を「内観法」と呼びます。方法としての「内観」は宗教ではありません。しかし、宗教者が修行の一つの方法として内観すれば、それを「内観法」と呼ぶと考えます。

では「内観法」は宗教でしょうか。「内観法」は宗教の修行ではありますが、内観教といえるような教義もありませんし、教祖もいませんので、「内観法」は独立した宗派ではありません。又、一宗一派に属するものでもありません。「内観法」は全宗教共通のものであり、宗教の基本とも言えると思います。しかし、「内観法」が全宗教共通のもので宗教の基本と言えるものであっても、現在の日本の法律では宗教とは言わないようです。  


― 吉本伊信先生ご自身はどういった動機で身調べ、内観を開始されたのでしょうか?

吉本 : 大正13年5月12日吉本伊信9歳の時、妹チエ子が亡くなりました。その後母ユキヱの求道生活に付きそうなかで、浄土真宗の勤行を暗記していったそうです。

書家になろうと稽古に励みながら仏教の勉強もしていた昭和11年頃、兄嫁の親戚に「身調べ」の体験者がおられ、
「知ってはいても体験が伴わなければ物知りにすぎません。私は悪人です、地獄行きです、と聞いたり読んだりして覚えたのと、真実自分の過去を身調べして罪悪深重の自覚を体験するのとでは、大きな相違ですね」
とそれまでの信者気取りが大きな誤りであったことに気づかされました。その方のお世話で駒谷諦信師のお導きを受けることになりました。


― 吉本伊信先生が確立された内観は、それまでの「身調べ」と比べるとどういった違いがあるのでしょうか?

吉本 : 「内観法」の基礎になった「身調べ」とは昭和11~2年、吉本伊信が諦観庵の駒谷諦信師(昭和20年没)から指導された修行法です。「身調べ」を指導していた諦観庵は西本諦観師(明治45年没)が創設されました。西本諦観師は浄土真宗西本願寺の役僧でしたが、能登の千恵光師のお導きにより転迷開悟され、後に西本願寺から離れて諦観庵を創設され、「身調べ」を指導されました。千恵光師についての詳しいことは不明です。以上のことから、「身調べ」と浄土真宗との関係は不明です。西本諦観師が浄土真宗の僧侶であったことから、「身調べ」も浄土真宗の信者の間に広まったのではないでしょうか。

「身調べ」は諦観庵の修行法でしたが、修行中の面会禁止や修行内容の口外禁止等の秘事法門的部分を改善して昭和16年頃から「内観法」と呼ばれるようになりました。

「身調べ」では「地固め」と称して決心を強めるためのお話が繰り返され、念をおされる習慣がありました。決心の固さを示すために、飲まず食わず眠らずに修行することが求められていたようです。「身調べ」については文献や資料が少なくよくわかりませんが、「一念に遇う」ことを目標にして「今死んだらどこへ行くか」ということを問い詰めたようです。

「内観法」では面会者があれば誰でも自由に面会を許し、むだな邪推や摩擦を避けることにしました。また、飲んで食べて寝て、内観者が熱心に内観に集中することに重点をおきました。そして一番大きな改善点は、日常内観を重視したことだと思います。


― 吉本伊信先生は、あの有名な超長寿番組、NHK「こころの時代」の、 なんと第一回放送で取り上げられたそうですね。 そのように注目され取り上げられた経緯についてお教えいただけますか?

吉本 : 昭和40年4月30日に春秋社から出版された「内観四十年」という本を読んで、NHKディレクターの金光寿郎さんが大和郡山市の内観研修所で2泊3日の内観をされました。その年の7月25日にはNHKラジオ第二放送で「内心の記録」が放送されました。

その後、
昭和40年12月5日NHK教育テレビ「女人成仏」、
昭和42年5月29~31日NHKラジオ「人生読本」、
昭和43年5月9日NHK教育テレビ「教養特集(心の転機)」、
昭和53年10月8日NHK教育テレビ「宗教の時間(瞑想の時代)」、
昭和56年3月1日NHK教育テレビ「宗教の時間(自己を見つめる)」
と、何回も放送されました。

昭和57年4月11日NHK教育テレビ「こころの時代(新しい自己の発見)」
の番組冒頭で金光さんが
「科学が進んだ時代になって、人間の心が重大な問題になってきている」
と話されています。
「宗教の時間」から「こころの時代」へと番組名を変えるにあたって、その橋渡しに内観が適していると考えられたのだと思います。


― 吉本伊信先生は、どのようなお人柄の方でしたでしょうか。

吉本 : 吉本伊信にとって、内観のない人生は考えられません。内観最優先の人生でした。内観で一人でも多くの方が幸せになってほしいと心から願っていました。自分だけでなく、一人でも内観最優先の気持ちになっていただけると大変喜びました。そして、そういう人達がたくさん現れました。
一方、内観にとって吉本伊信の役割は大変大きなものであり、吉本伊信がいなければ現在の内観は存在しなかったと思います。内観で幸せになった方々の中には、吉本伊信に恩返しのつもりで、内観を広めようと考えた方もおられたようです。しかしそれは、内観にとって、内観者にとって、本当に正しいことなのでしょうか。吉本伊信のために内観があるのではなく、内観のために吉本伊信があったと本人は考えていたと思います。


本山 : 吉本伊信先生のお人柄は一言では表せません。それだけ大きい人物だと言えるでしょう。特に晩年は、近寄りがたいほどの厳しさを漂わせているかと思えば、赤ん坊のような無邪気な笑顔で、一人でニコニコしていたりしました。才気活発な方で多方面で成功を収めましたが、自らの能力に頼ることはなく、まるで無能な人のように振る舞っており、自らをボケ老人と言っていました。剛胆な一面を見せるかと思えば、女性ごころにも通じ奥様にはきめ細かい愛情を示して、お二人は最後まで新婚夫婦のように仲が良かったです。とにかく、スケールの大きくて自由自在な方で、いろいろな顔を見せていたので一言では表現できません。


― 吉本伊信先生との関係で、個人的に心に残るエピソードがあれば何かお教えいただけますか?

本山 : 私が助手としてお手伝いを始めた初日に「ここに届いた郵便物は全部見ても構いません」と言われました。吉本伊信先生は実業家としても成功された方なので、引退後も莫大な財産を資産運用されていました。当時、証券会社や銀行からの郵便物や私的な手紙等が頻繁に届いておりました。まだ、私の人柄をよく分かっていない段階で、それを全部見てもいいと言われる開けっぴろげな態度に圧倒されたことを覚えています。 


― 現在、どういった方が内観をされに研修所へこられていらっしゃいますか?

本山 : 経営者、社員研修、学校の先生、医師、看護師、心理学の研究者、大学教授、少年院・刑務所の職員、スポーツ選手、宗教・ヨガ・東洋治療等の指導者、主婦、学生等とにかく社会の縮図と考えていただいていいほどさまざまな分野の方が訪れます。


― 内観をすることにより、個人の心理状態としてはどういった変化がでる方が多いでしょうか?

本山 : これは個人差があって、人によってさまざまな変化が起きるようですが、生きるのが楽になったとか自分の人生に責任を持つようになったとおっしゃる方が一番多いようです。


― 内観をすることにより、日常の対人関係ではどういった変化がでる方が多いでしょうか?

本山 : 周りがよく見えるようになり、他者を受け入れやすくなる方が多いようです。


― 医療方面でも病院内での療法としてももちいられていると聞きますが、どのような治療に応用されているでしょうか?

本山 : 内観療法は適用範囲が広くほとんどの病気に有効だと思いますが、症状が急性期にある場合や統合失調症、躁鬱病、重度のうつ病、強迫神経症等の場合には注意が必要だと言われています。


― 今回電子書籍として公開していただいた内容は大学の精神学科向けでの講演ですが、とくに心の面では効果があがる場合があったのでしょうか?また、講演は1970年代後半のものですが、最近では医学会からの関心はいかがですか?

本山 : 最近は認知行動療法が注目されてきた関係からか、認知の変化が起きる内観療法も以前より注目されてきています。特に海外にその傾向が強く、中国では昨年から内観療法が保険適用として認められました。


― 内観は文化の違う外国人にも効果はあがっている例はございますか?

本山 : いっぱいあります。文化には関係ないようです。


― 海外ではどういった国で内観を実施している国があるでしょうか?

本山 : ドイツ、オーストリア、イタリア、アメリカ、中国、韓国等で実施されています。


― 海外の場合、なかにはキリスト教などの宗教をおもちの方もいらっしゃると思うのですが、そういった方が取り組まれてもよい結果を得た例はございますか?

本山 : 内観は宗教には関係ありませんので、多くあります。 


― スポーツ選手がメンタルトレーニングでおこなうこともあるとうかがいましたが、具体的にたとえばこの方、という方などいらっしゃるでしょうか?また、スポーツではどのような効果があった、などの具体的な報告例は存在するでしょうか?

本山 : プライベートなことなのであまり言えませんが、ご本人が公開している方だけでも、野球のソフトバンクで活躍している小久保選手とかサッカーの元日本代表の岡田監督等がいます。


― 刑務所内での実施もあると伺いましたが、どのような効果がでた例があるでしょうか?また成果について、再犯率への影響など統計のようなものはございますか?

本山 : 刑務所の資料は非公開ですので、あまり公表できませんが、効果はあるようで現代まで50年以上も活用されている実績からも証明できると思います。例としてはヤクザの親分が内観で更生して会社の社長さんになられた例や、死刑囚の方が内観を深められて罪を深く懺悔されて、極限の状態にも関わらず、模範囚として感謝にみちた生活をされ、死刑が執行される瞬間まで、りっぱな生き方をされたという元看守の方の証言もあります。


― 受験勉強や資格勉強などで内観により成果があがった、という方はいらっしゃいますか?

本山 : 内観だけの効果ではないとは思いますが、集中内観後、一年で飛躍的に成績が伸びて国立の医学部に合格したり、弁護士、公認会計士に合格したという方もいらっしゃいます。


― 逆に内観をすることにより悪い変化があった方はいらっしゃいますか?

本山 : 私の面接経験ではありません。その理由としては、集中内観は自主性を一番重要視します。したがって、内観を中断するのも自由です。内観が合わないと思った方は途中で集中内観を中断するから、心の準備ができていない方でも悪くなることがないのだと考えられます。


― 内観をしてもまったく変化のない方はいらっしゃいますか?

本山 : それは時々いらっしゃいます。


― 内観以外の療法や瞑想法について、それらの効果についてはどのようにお考えでしょうか?

吉本 : 内観以外の療法や瞑想法についてはよくわかりません。内観も同じで、効果があったことは事実なのでしょうが、なぜ効果があったのかがよくわかりません。悪循環が絶たれて、その間に自然治癒力が働いたのかもわかりません。内観についてもよくわからないのに、内観以外の療法や瞑想法についてはもっとわかりません。


本山 : 内観療法以外のことについては、コメントする立場にありません。


― 最後に、内観の良さとしてとくにこれ、というものがございましたらお教えください。

吉本 : 「自分を知る」ということが、「自分を知らない」ことから発生する悩みを解決する方法として、非常に良い方法ということだと思います。  逆に内観の欠点は、本人が自発的にやってみようという気持にならなければ始まらないということです。


本山 : 精神分析でいう自我能力が発達します。つまり、自分で考え、判断する能力が高まると思います。


― どうもありがとうございました。




吉本伊信 プロフィール

吉本伊信

大正5年、奈良県大和郡山市に生れる。
昭和7年奈良県立郡山園芸学校卒業。
昭和12年11月、内観法の普及を開始。昭和29年、奈良刑務所に持込み、京都刑・大阪刑・和歌山刑の篤志面接委員を拝命のほか、全国各地の矯正施設や学校に内観法を普及。
昭和63年8 月1 日、逝去。